我が国に於ける遊廓待合茶屋竝に芸娼妓酌婦数及分布状態

一、遊廓及娼妓数竝に分布

最近に於ける我国全土に於ける貸座敷、引手茶屋数及娼妓の数を見るに、大正十三年の調べによると貨座敷免許地といふのは全国で、五百四十五ヶ所、筆頭は北海道の四十九ヶ所で、その次は静岡の三十五か所、山口の三十一ヶ所といふ事になつてゐる。

貨座敷の最も多いのは、京都の二千二百三十四軒、次ぎが大阪の一千四百三十軒、東京は三番目で七百三十四軒。引手茶屋では東京の六十七軒を筆頭に、広島の五十二軒、宮城の十七軒、秋田の十六軒之に次ぎ、貸座敷は全国で一万一千二百二十七軒、引手茶屋百八十一軒である。

次に娼妓の数であるが、最も多いのは大阪の六千六百〇六人。次ぎが東京の四千九百八十九人、三番目が京都の四千二百三十三人は、一寸奇異な感じがする。東京は貸座敷数に比しもっとあってもよささうなものである。

（群馬県に遊廓のないのは明治二十六年十二月三十一日貸座敷営業を廃止せるによる。）

各府県に於ける貸座敷娼妓及雇人数（大正十三年末）

備考 沖縄県の分、報告未着に付仮りに大正十二年末の事実を掲ぐ

二、待合茶屋料理屋芸妓数並分布

芸妓、酌婦も等しく笑を売る女である。次に料理屋、待合茶屋、芸妓、酌婦及幇間について調べて見やう。幇間とは文字通りの幇もちで洒間をとりもつのであるが、二れは主に男の商売、（男といつても女の腐つたのよりは悪い、先づ男のくづともいふべき）である。即ち幇間六百四十九人中の半数以上は男である。

さて、全国に於ける料理屋はといふに沖縄県を除き、五万五百二十六軒、筆頭は長野県の三千二百七十―軒、次いで兵庫県の三千九十九人、北海道が二千九百八十八軒、愛知県が二千五百四十三軒、福岡県が二千五百二十二軒、といふ順序で最も少ないのは宮崎県の二百九十五軒である。

次に待合茶屋で合計三千九百九十八軒中、東京の二千二百五十一軒を筆頭に、ずつと下つては神奈川県の三百三十一軒、兵庫県の三百〇四軒、栃木の二百二十九軒といふ順序である。最も少いのは鳥取県の二軒、山口県の三軒といふのがあり、全然ない県が一道二十二県、即ち北海道、長崎、群馬、千葉、奈良、三重、山梨、滋賀、岩手、山形、福井、石川、岡山、和歌山、香川、愛媛、高知、大分、佐賀、宮崎、鹿児島、沖縄の諸県である。

芸妓の最も多いのは何と云つても東京である。七万五千三百六十五人中、九千九百九十七人即ち一三・二％を占めて居る。次が大阪の五千五百三十六人、七・三五％、その次が愛知県の五千百三十五人、六・八一％、兵庫県が四千三百〇一人、一五・七一％、最も少いのは沖縄の二十人といふ有様である。

さらに、芸妓を大と小即ち一本と半玉とに分てば、―本の最も多いのは東京の九千九十八人、大阪の五千四百四十一人、愛知の四千六百五十人、兵庫の四千百五十九人、最も少いのが沖縄の十九人。半玉では東京の八百九十九人を筆頭に愛知の四百八十五人、北海道の四百四十三人、静岡の三百三十人、京都の三百二十九人、三重の三百十人といふ順序となつてゐる。

酌婦では、福岡県の四千八百五十四人を筆頭に、兵庫県の四千五百七十三人、神奈川の三千二百六十四人、静岡の三千百四十九人といふ順序で、最も尠いのは島根県の八十人であるが、東京、新潟、岡山、愛媛の諸県には酌婦を置くことを禁止せられた為、現在は一人も此の業体を見ない。

次に示す表は、府県別料理屋、待合茶屋、芸妓、並に、幇間の調査である。

各府県に於ける料理屋待合茶屋並に芸妓酌婦及幇間数

備考 沖縄県の分、報告未着に付仮りに大正十二年末の事実を掲ぐ