温泉地に於ける売春婦

湯のけむりと売春婦、避暑に避寒に温泉地は有産階級のみが享楽し得る極楽境であらうが、そこに奴隷生活を展開してゐる売春婦の熱湯地獄こそは見逃してはならぬ。著者は覆被ふことの出来ない数字を以て、美化され、詩化された温泉町に於ける奴隷の統計を示して、物語りめいた温泉地の風紀を曝露しやう。

お目にかける表は、全国著名温泉地に於ける売春婦の数字である。人肉の市場か、湯治場か、温泉町こそは無産階級の敵がこれみよがしの享楽地である。

全国著名温泉地に於ける売春婦数（順位表）大正十四年

全国、著名温泉地二十六ヶ所に於ける、売春婦二千六百九十七人中、別府の湯地獄は全国に冠たる売春窟、売春婦六百人（五九七人）脂粉にかくれて、ひそかにうめく娼婦の声は、ブルジョア階級の腐つた生活に添へられる興趣である。

次が宝塚の三百人（三二〇人）山中の二百人（一九一人）以下百人以上の売春婦を有する温泉地が六ヶ所、五十人以上同じく六ヶ所を見る。